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【一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会】
研究成果:大麻使用と他薬物使用の関連について実態調査結果を公表――仮説と現実の乖離とは
2025/07/02 8:27:10
−日本における「ゲートウェイドラッグ仮説」に再考を促す新たな研究結果を発表−
一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会に所属する正高佑志(一般社団法人Green Zone Japan、聖マリアンナ医科大学脳神経外科)、赤星栄志(日本大学生物資源科学部)、松本俊彦(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部 )、太組一朗(聖マリアンナ医科大学脳神経外科)らの研究チームは、2025年7月1日、査読付き学術誌「Neuropsychopharmacology Reports」において、日本の大麻使用者を対象にした大規模な二次解析研究の成果を発表しました。
本研究は「大麻が他の違法薬物使用の入り口になる」とするいわゆる「ゲートウェイドラッグ仮説」の日本における妥当性を検証した内容であり、その前提に対して新たな科学的疑義を提示する内容となっています。
【研究の概要】
本研究は2021年1月に実施された匿名オンライン調査のデータを用い、3,900名の日本人大麻使用者の薬物使用履歴を分析したものです。SNSなどを通じて広く参加を募り、回答者の大多数(81.5%)は20代〜30代の成人男性でした。
使用薬物の順序や移行パターンを可視化したところ、大麻は多くの場合「3番目」に使用されており、アルコールやタバコが使用の出発点となる傾向が明らかとなりました。加えて、大麻使用後に覚醒剤やコカインなどの違法薬物に移行する割合は低く「ゲートウェイ効果」が確認されないことが示されました。
【主な研究成果】
・大麻使用者の約55%は他の違法薬物に移行していない
・大麻使用者が覚醒剤使用へと移行するオッズは0.08
・違法薬物全体に対しても移行オッズは0.78と少数派
・大麻よりも先にアルコール(96.3%)やタバコ(93.8%)を使用しているケースが圧倒的多数
【研究の意義と提言】
本研究はこれまで大麻政策の根拠として扱われてきた「ゲートウェイ仮説」に対し、日本における実態と整合しない可能性を示しました。さらに、薬物使用の背景には年齢・学歴・社会的脆弱性といった社会的要因が大きく影響していることを示唆しています。
現在、2024年12月の改正大麻取締法施行により、大麻使用そのものに対しても刑事罰が科されるようになりました。本研究はこうした厳罰化政策が大麻以外の違法薬物へのアクセスリスクを逆説的に高める可能性があることに対して警鐘を鳴らすものです。
【論文情報】
掲載誌:Neuropsychopharmacology Reports(Wiley)
タイトル:Revisiting the Gateway Drug Hypothesis for Cannabis: A Secondary Analysis of a Nationwide Survey Among Community Users in Japan.
著者: 正高佑志、片山宗紀、梅村二葉、杉山岳史、三木直子、赤星栄志、岡千紘、旭雄士、松森隆史、太組一朗、村田英俊、松本俊彦
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/npr2.70033
本研究は、下記から継続した第三弾の研究成果として位置付けられています。
第二弾の研究成果:大麻健康被害のリスクは若年使用と精神疾患の既往・家族歴-
日本臨床カンナビノイド学会理事らによる研究チームが日本初の大規模調査結果を公表-
https://www.dreamnews.jp/press/0000272909/
第一弾の研究成果:大麻使用者の90%以上は依存症ではなく、社会的に機能していることが明らかに
SNSを活用した市中大麻使用者における大麻関連健康被害に関する実態調査ー第1報ー
https://www.dreamnews.jp/press/0000250602/
FileName:
ダウンロード:大麻のゲートウェイドラッグ仮説の再考(2025)